
介護と仕事を同時に抱える生活は、想像以上に心身への負担が大きく、「このまま続けられる気がしない」と感じる瞬間が増えていきます。
50代前半の女性であれば、親の体調変化をきっかけに介護が始まり、気づけば日常の中心に介護が入り込んでいる、というケースも少なくありません。
朝は親の様子を気にかけながら家を出て、仕事中も電話が鳴らないか落ち着かない。定時後は病院や買い出し、手続きに追われ、気づけば自分の時間はほとんど残っていない。
責任ある立場であればあるほど、「仕事も介護も、どちらも十分にできていないのでは」と自分を責めてしまうこともあります。
「介護と仕事は両立できる」「制度を使えば大丈夫」と言われることもありますが、現実はそう簡単ではありません。
制度の使い方が分からない、職場にどう伝えればいいか迷う、介護がいつまで続くのか見通しが立たない。そんな不安を抱えたまま、誰にも相談できずに耐えている人も多いのが現実です。
こうした違和感は、あなたの努力不足や甘えから生まれているものではありません。
介護と仕事を同時に背負う状況そのものが、長期的に負荷の大きい状態だからです。
この記事では、介護と仕事の両立が難しく感じられる背景や、無理を続けた場合に起こり得ること、そして今の状況に合った働き方の選択肢を整理していきます。
何かを急いで決めるためではなく、「今の自分はどんな状態なのか」を落ち着いて見つめ直すための材料として、読み進めてみてください。

介護と仕事の両立が難しく感じられる最大の理由は、介護が「先の見通しを立てにくい生活上の制約」だからです。仕事は役割やスケジュールがある程度決まっていますが、介護は家族の体調や状況によって、突然負担が増えたり、想定外の対応が必要になったりします。この不確実さが、働き続ける上で大きな心理的ストレスになります。
さらに、介護の負担が重なりやすい年代にも特徴があります。
親の介護が現実的な問題として浮上しやすいのは50代前後で、この時期は仕事でも責任ある立場を任されていることが少なくありません。
「仕事を簡単に休めない」「代わりがいない」という状況と、介護の必要性が同時にのしかかることで、両立の難しさが一気に表面化します。
この状況は個人の努力不足によるものではなく、統計上も一定数の人が同じ壁に直面していることが示されています。
| 観点 | データの要点 | この事実が示すこと |
| 介護・看護を理由に離職した人 | 年間 約7.3万人(2023年) | 両立が限界になる人は毎年一定数いる |
| 離職者の年代 | 50代が最も多い | 仕事責任と介護負担が重なる時期 |
| 離職者の性別 | 約7割以上が女性 | 介護負担が女性に偏りやすい構造 |
参考:公益財団法人 生命保険文化センター|介護離職者は年間約7万人
この数字は、「介護と仕事の両立ができないと感じる人が少数派ではない」ことを示しています。多くの場合、最初から退職を考えているわけではなく、何とか続けようと無理を重ねた結果、選択肢が狭まり、追い込まれてしまいます。
もう一つの要因は、制度と現場の間にあるギャップです。
介護休業や介護休暇、短時間勤務などの制度は法律上整備されていますが、実際には職場で十分に共有されていなかったり、取得すると業務に支障が出るのではないかという心理的な壁があったりします。その結果、「制度は知っているが使えない」という状態に陥りやすくなります。
参考:厚生労働省|仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~
また、介護は短期間で終わるとは限らず、数年単位で生活に影響が及ぶことも珍しくありません。
「今だけ頑張ればいい」という考え方が通用しにくく、仕事の続け方そのものを見直す必要に迫られる点も、両立を難しく感じさせる要因になっています。
このように、介護と仕事の両立が難しくなる背景には、年齢的な役割の重なり、介護の予測困難性、制度と現場のズレといった複数の要因があります。まずはこの構造を理解することで、「できない自分」を責める視点から一歩距離を取ることができます。

介護と仕事の両立を「何とか耐える形」で続けた場合、最も起こりやすいのは、本人の意思とは関係なく働き方の選択肢が狭まっていくことです。
これは感覚的な話ではなく、統計上も一定数の人が同じ経路をたどっていることが示されています。
厚生労働省の「雇用動向調査」をもとにした整理によると、2023年に介護・看護を理由に離職した人は約7.3万人にのぼります。とくに50代の割合が高く、女性が7割以上を占めています。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター|介護離職者は年間約7万人
この数字が示しているのは、「介護と仕事の両立が難しいと感じた結果、離職に至る人が毎年一定数存在している」という事実です。
多くの場合、最初から退職を選んでいるわけではなく、調整や相談を後回しにした結果、選択肢が減っていくという経過をたどります。
無理を続けた場合に起こりやすい変化を整理すると、次のようになります。
| 時期 | 起こりやすい状態 | 判断への影響 |
| 初期 | 疲労・睡眠不足 | 「まだ様子を見よう」と先送り |
| 中期 | 集中力低下・業務ミス | 調整の余裕がなくなる |
| 後期 | 心身の限界 | 「辞めるしかない」という判断 |
介護は短期間で終わるとは限らず、数年単位で生活に影響が及ぶことも珍しくありません。
この長期性を見誤ると、「一時的に無理をすれば乗り切れる」という判断になりやすく、結果として制度利用や働き方調整のタイミングを逃してしまいます。
限界を迎えてから考えるのではなく、余力があるうちに状況を整理できるかどうかで、選べる道は大きく変わってきます。

介護と仕事の両立が難しく感じ始めたときに重要なのは、「続けるか、辞めるか」という二択にしないことです。今の負担や制約に合わせて、働き方を一度“横に並べて整理する”ことで、現実的な選択肢が見えやすくなります。
まず前提として、どの働き方にも「向いている時期」と「負担が大きくなりやすい時期」があります。介護が本格化している今は、過去にうまくいっていた働き方が、そのまま当てはまらなくなることも自然なことです。
正社員として働き続ける選択は、収入や社会保険、キャリアの継続性という点で安心感があります。一方で、介護との両立を考える際には、勤務時間や業務量の調整が現実的に可能かどうかが大きな分かれ目になります。
制度が存在していても、職場の体制や人員状況によっては使いづらいケースもあります。その場合、「制度がある=安心」と思い込まず、実態ベースで整理することが大切です。
派遣は、勤務日数や時間、業務内容をある程度限定して働ける点が特徴です。介護の予定が読みづらい状況では、「フルタイム・固定業務」であること自体が負担になる場合もあります。
一方で、派遣に対して次のような迷いを持つ人も少なくありません。
こうした気持ちは自然なもので、無理に払拭する必要はありません。大切なのは、「今の自分にとって、どの負担を軽くしたいのか」を軸に考えることです。働く責任の重さを一時的に調整する、という捉え方もできます。
正社員や派遣以外にも、短時間勤務のパートやアルバイト、一時的な休職という選択肢もあります。収入面や社会保障面での影響はありますが、その分、介護に向き合う余力を確保しやすくなる場合があります。
この段階では、「どれが正解か」を決める必要はありません。
この3点を基準に、現実的なラインを探ることが目的です。
| 働き方 | 整理の視点 | 向いている状態 |
| 正社員 | 安定性・責任の重さ | 調整が可能な職場 |
| 派遣 | 時間・業務の限定 | 介護負担が読みにくい |
| パート等 | 余力確保 | 介護比重が高い時期 |
| 休職 | 生活再構築 | 一時的に余裕が必要 |
働き方を整理することは、何かを諦めることではありません。
今の制約を前提に「続けられる形」を探すプロセスです。選択肢を並べて見渡すことで、「まだ考えられる余地がある」と感じられる状態をつくることが、この段階のゴールになります。
介護を理由に働き方を変えるのは、逃げだと見られませんか?
介護を理由に働き方を見直すことは、逃げではありません。
家族の状況という自分ではコントロールできない制約に合わせて、現実的な選択をしているだけです。実際に、介護を理由に働き方を調整したり、離職したりする人は毎年一定数存在しています。
介護休業や介護休暇を使えば、仕事は続けられますか?
制度を使うことで負担が軽くなるケースはありますが、それだけで両立できるとは限りません。制度の使いやすさや、復帰後の働き方まで含めて整理することが重要です。
「一度使えば解決するもの」と考えないほうが現実的です。
正社員を続けるか迷っていますが、決断を急ぐ必要はありますか?
急ぐ必要はありません。
介護は長期化することが多く、短期間で結論を出すとかえって後悔につながることもあります。
今の負担を把握し、選択肢を整理する段階を踏むことが大切です。
派遣や短時間の仕事に切り替えると、元に戻れなくなりませんか?
一度働き方を変えたからといって、将来の選択肢が完全に閉ざされるわけではありません。
状況に応じて働き方を調整することは、キャリアを諦めることではなく、続けるための方法の一つと考えられます。
介護と仕事の両立が難しいと感じるのは、あなたの努力や覚悟が足りないからではありません。介護は予測が難しく、長期化しやすい生活の制約であり、仕事の責任が重くなりやすい年代と重なることで、誰にとっても負荷が高くなりやすい状況です。
実際に、介護を理由に働き方の継続が難しくなる人は毎年一定数存在しています。これは個人の問題ではなく、多くの人が直面している現実です。だからこそ、「無理を続けるか、辞めるか」という極端な選択ではなく、一度立ち止まって状況を整理することに意味があります。
整理するときの視点はシンプルです。
この問いに正直に向き合うことで、正社員、派遣、短時間勤務、休職などの働き方を「良し悪し」ではなく「今の自分との相性」として考えられるようになります。
働き方を見直すことは、キャリアを手放すことでも、後ろ向きな決断でもありません。状況が変われば、また選び直すこともできます。大切なのは、追い込まれた状態で決断するのではなく、余白があるうちに考え始めることです。
もし今、「このままでいいのか」と感じているなら、その感覚自体が整理を始めるサインです。答えを急がず、今の自分にとって続けられる形を探すところからで構いません。そのプロセスそのものが、これからの選択を支える土台になります。