近年、住宅・不動産業界において「人手不足」は企業運営に多大な影響を与えています。業務負荷の増加、離職者の増加を引き起こし、業績が悪化して経営が立ち行かなくなると倒産する企業も増えています。
極端なケースでは、適切な後継者が見つからない・確保できないことによる「後継者難倒産」にも波及します。高齢化が進む経営者層にとって後継者難は非常に深刻な課題です。
本記事では、この「後継者難倒産」に焦点を当て、その現状と解決策について詳しく解説します。
一般的に人手不足が引き起こす倒産は、企業が適切な人材を確保できずに業績が低下し、最終的には経営破綻に至る状況です。
人手不足による倒産は「後継者難倒産」のほか、次のようなケースがあります。
企業が求める人材を採用できずに業績が低下し、最終的には倒産に至るケースです。
住宅・不動産業界では、例えば施工管理者や特定の専門職などのポジションに求職者が集まらず、人材の確保に失敗すると、そもそもプロジェクトを進行できなくなります。
この状況が続くと業績に直接影響を与え、最悪の場合、企業は存続の危機に瀕する可能性もあります。
人件費の増加によって起こるケースの倒産です。特に、近年の最低賃金の引き上げなどで人件費が高騰すると、収益が悪化して事業継続が困難になる場合があります。
社員や経営幹部の退職が起因する人手不足倒産です。特に重要な役割を担っていた人材が転職や独立を選ぶと、その影響は企業に深刻な打撃を与えます。
経営者が引退する際に、後継者が見つからないことで引き起こされる倒産「後継者難倒産」で、主に中小企業で見られます。事業を引き継いで経営に携われる人材が育っていなければ、事業継続は困難になります。
株式会社東京商工リサーチの2023年4月の調査によれば、後継者難による倒産は前年同月比で16.2%増加し、43件が報告されています。
主な倒産の要因としては、代表者の「死亡」や「体調不良」が挙げられ、これらが全体の8割強を占めています。さらに、後継者が確定していない企業は約6割に上っています。
同調査によれば、後継者不足による倒産は主に中小・零細企業が対象で、代表者に何らかの不測の事態が生じた場合、事業継続が困難となり、破産による会社整理を選択するケースが多いとされています。
出典:株式会社東京商工リサーチ
企業が後継者難倒産に陥る背景には、いくつかの共通する特徴があります。
借入金や買掛金等の負債が多い企業は、倒産リスクが高まります。
事業承継には以下のような費用がかかります。
負債によって上記の費用を捻出することが難しくなれば、経営層が事業承継を進めることができず、最終的には倒産に至る可能性が高くなります。
東京商工リサーチの「全国社長の年齢」調査によると、2022年の社長の平均年齢は、調査を開始した2009年以降で最高の63.02歳であることが述べられています。
経営者の高齢化は後継者難倒産の大きな原因です。体調不良や死亡などのリスクが高まり、後継者育成が進まず、後継者が見つからないケースも少なくありません。
出典:株式会社東京商工リサーチ
ワンマン経営の会社では、経営者が後継者を育成することに消極的である傾向にあります。一部の経営者は「自分の会社を自分の意志でコントロールしたい」という気持ちが強いため、後継者に権限や責任を委譲することに抵抗を感じることがあります。
人材の定着率が低い企業では、いくら優れた人材が入社しても、後継者としての資質を発揮する機会が減少します。したがって、企業は不適格な人物を後継者として指名する、または後継者がいないという状況に陥る可能性が高まります。
社員の定着率改善に向けたアプローチについては、以下の記事にまとめています。
人材の定着と活躍を支える採用後サポートとは? リテンションマネジメントの重要性
では後継者がいない・不足しているなどの課題がある場合、どのような解決方法があるかを探っていきましょう。
事業承継計画とは、企業や事業が将来的に安定して継続されるように、経営者が変わる場合の準備と手続きを計画することを指します。具体的には、企業のビジョン、経営理念、財務状況、業績の推移といった多角的な側面を考慮しながら、後継者にどのように事業を引き継ぐかを詳細に設計します。
事業承継においては、この計画策定が基本的かつ重要な第一歩です。具体的な手段を選ぶ前に、まずは全体的な方針と計画をしっかりと考えましょう。
税務の知識を深めたい方や専門家に相談されたい方は、以下を参考にしてください。
企業内から後継者を探し出し育成するアプローチです。企業文化やビジネスの特性に精通している可能性が高いことから、新しいリーダーが企業にすんなりと馴染む確率が上がります。
一方で、他の社員が選定プロセスに納得しなければ、社内の対立に繋がるリスクがあります。また、既存の企業文化に囚われがちなので、長期的に見ると企業の革新性や柔軟性に影響を与える場合があります。
親族内での事業承継は、既存の企業文化やビジョンが容易に継承できる点がメリットです。また、家族間での信頼がある場合、スムーズな運営が期待されます。
ただし、適格な後継者がいない場合や、親族間での意見が分かれる可能性もあり、後継者選定の過程で内紛を引き起こすリスクもあります。
M&A(合併・買収)は、後継者が社内にいない、または適切な後継者が見つからない場合に有効な事業承継手段です。企業にとっては短期間で後継者問題をクリアし、企業価値を維持または向上させる大きなメリットがあります。
ただし、社員にとっては新しい経営方針や文化に適応する必要が生じる場合が多く、その過程でのストレスや適応困難は無視できません。場合によっては、社内の退職者が出る可能性もあります。
加えて、M&Aによって社員に対する報酬体系や昇進の道が変わることも考えられます。これらの変更が社員にとって不利益であれば、その不満が経営層までエスカレートする可能性もあります。
社内や親族に適切な後継者がいない、または経営能力が不十分な場合、外部から選定する必要があります。
一定のコストがかかること、企業内の機密情報が漏洩する可能性、新しい後継者が企業文化に適合しないリスク、社内の反発、および後継者が期待に応えられない場合の時間と資源のロスなど、複数のリスクを知った上で検討を開始してください。
経営者自身で事業承継を進めるのではなく、事業承継専門のコンサルタントに相談することで、客観的な視点から事業承継を進めることができます。
コンサルタントは、事業承継の進め方や必要となる手続きなどをアドバイスしてくれるほか、後継者候補の選定や育成などの支援も行ってくれます。
M&Aで事業継続をする選択肢が主流となってきている一方で、経営者自身が「人一倍の苦労をしながら積み上げてきた会社は、単に売り買いで解決するようなモノではない」このように考える方もいます。
この場合、3年~5年、場合によってはそれ以上の期間を設けて、自社で経験ある人材を採用して、「この方であれば安心して任せることができる」「今まで築いた企業理念や従業員を守っていくことができる」等、経営者自身が実感したタイミングで経営をバトンタッチする選択肢もあります。
ユナイテッドマインドジャパンでは、ハウスメーカー事業部長など、特定の業界で豊富な経験を持つ後継者候補を紹介可能です。後継者不足にお悩みなら当社にご相談ください。経験豊富な後継者候補を見つけるサポートをいたします。
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人手不足倒産の中でも「後継者難」倒産は住宅・不動産業界においても深刻な問題であり、未解決のままでは企業の存続にも影響を与える可能性が高いです。
中長期的に後継者選定と育成、経営状況と事業計画の透明化、そして専門の人材紹介サービスの活用など、多角的なアプローチが必要です。
住宅・不動産業界に特化した人材紹介サービスである当社は、後継者候補のマッチングもお手伝いします。さらなる詳細は、お気軽にお問い合わせください。