人件費の高騰は住宅・不動産企業にとって避けられない課題で、特にリソースやコストが限られている中小企業には深刻です。
「賃金水準を上げると財務状況に影響を与え、人件費を削減すれば優秀な人材の確保や保持が難しくなる」というジレンマを抱える企業も少なくありません。
そこで本記事では、昨今の人件費高騰の背景を深掘りし、採用面での具体的な対策を提案します。
人件費とは企業が従業員に支払うすべての費用を指し、給与、賞与、福利厚生、社会保険料等が含まれます。
一般的に以下の計算式で求めることができます。
総人件費 = 基本給の合計 + 残業手当の合計 + ボーナスや賞与の合計 + 社会保険料の企業負担分 + その他の人件費
このように人件費には幅広い項目が含まれるため、詳細に把握しておくことは経営上極めて重要であり、認識にズレがあると経営判断に誤りを招く可能性があります。
東京商工リサーチが2024年2月に公表した「価格転嫁に関するアンケート」調査結果によると、本業に係るコストが前年同月と比較して「増加した」と回答した企業が7割に上り、特に「労務費(人件費)」の増加を指摘する企業が71%(1,494社)を占めました。
この中で、コスト上昇分が「転嫁できていない」と答えた企業が約半数に達しており、企業規模にかかわらず、原材料や人件費の上昇が企業活動に影響を及ぼしているとことがわかります。
これらの状況は、住宅・不動産業界においても例外ではなく、経営戦略や人材採用における新たな対策が求められています。
参考:東京商工リサーチ 「価格転嫁に関するアンケート」調査
人件費が高騰する背景には複数の要因が存在します。
企業の人件費高騰は労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)の減少が根本にあり、その中で目前に迫る課題が2025年問題と2030年問題です。
年々高齢化が顕著になるにつれ、労働力の奪い合いは各企業間で激化します。
限られた労働力を争う状況では、給料を上げたり、賞与やインセンティブ制度を充実させたりして、より魅力的な職場環境にしなければなりません。これが人件費増加の主要原因となるでしょう。
2025年問題については、以下で詳しくまとめているので参考にしてください。
有効求人倍率は、1を超えると求職者が仕事を選べる立場になり「売り手市場」と呼ばれます。
最新の統計では日本の有効求人倍率は1を超える状態が続いており、人件費上昇の一因となっています。
近年の最低賃金の引き上げは、非正規雇用者の待遇改善を意図していますが、実際には企業の人件費の基本構造に関わり正規社員の給与レベルにも影響を与えます。
人件費の高騰は、企業の経営状況や競争力に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、対策を講じる前に以下の点に留意することが重要です。
人件費の高騰がどの程度自社に影響を与えるかは、企業規模や業種、現在の経営状況によって異なります。
まずは財務状況、人材構成、業界内の人件費の動向などを分析し、具体的な影響を把握することから始めましょう。
その上で、人件費以外の固定費などの経費や、付き合いや慣習に基づき継続している支出を優先的に見直し削減対象を検討します。
人件費のカットは短期的な財務改善には有効かもしれませんが、人材は企業の最も重要な資産の一つです。
従業員が「この会社は困難に直面した際、最初に自分たちを犠牲にする」と感じるような状況は、組織の士気に悪影響を及ぼし、企業のパフォーマンスにも影響します。
予期せぬ形で優秀な人材が離職するリスクもあるでしょう。
コスト削減を進める際には、単に費用を減らすだけでなく、人材の質やモチベーションを維持するための中長期的な施策も同時に検討する必要があります。
採用に関わる費用は、間接的な人件費として企業の経費に影響を与えることがあります。
そのため効果的な採用戦略は長期的な経営視点でも不可欠です。次から具体的な施策について考察します。
現代の中途採用市場では、オンライン求人サイトやSNS、ハローワーク、採用代行や人材紹介エージェントの利用が一般的です。
ただし、選定時には料金だけでなく、そのサービスが自社の採用ニーズにどれだけマッチしているか、また費用対効果をどのように評価するかが鍵となります。
当社ユナイテッドマインドジャパンは住宅・不動産業界に特化した人材紹介サービスを提供しており、業界特有のニーズや課題を理解した上でのサポートが可能です。
より詳細な情報やサービスについては、お気軽にお問い合わせください。
採用プロセスのオンライン化は、人件費の削減だけでなく、採用の質と効率を同時に向上させる効果が期待できます。
従来の紙ベースの応募書類に代えて、Webフォームやデジタル形式での応募を受け付けることにより、求職者情報の管理や選考作業を大幅に効率化できます。
求職者も手軽に応募できるため利便性が向上します。
ZoomやMicrosoft Teamsなどのオンラインツールを使用して面接を実施することで、交通費や時間のコストを削減できます。
場所や時間の制約がなくなるため、より多様な求職者にアプローチできるでしょう。
説明会や選考イベントをオンラインで開催することにより、参加者数の制限をなくし、不参加者や転職潜在層にも情報を届けることが可能になります。
運営コストの削減にもつながるでしょう。
住宅・不動産企業に限った話ではありませんが、人事担当者と上層部間での意見の乖離は、採用プロセスにおいて混乱を招き、最終的に良質な人材の獲得機会を逃してしまいます。
例えば面接の内容と事前情報が異なると、求職者は不信感を募らせ内定辞退や早期離職のリスクを高めます。また、企業のブランドイメージに悪影響を与えることにもなります。
採用方針や求める人材像に関する共通の理解を深め、プロセスの透明性を確保することで、求職者との信頼関係が構築され人材確保につながります。
人件費高騰という厳しい状況の中、住宅・不動産企業が人材を積極的に確保し、末長く定着させることは未来への投資となるでしょう。
ユナイテッドマインドジャパンは、良質な人材と企業の最良なマッチングを行い、採用コストの最適化と人件費高騰を緩和に近づけるサポートを提供します。
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