工事が設計図書通りに進行しているかを監視し、プロジェクト全体の品質を守る工事監理(施工監理)。
一定規模以上の建築工事では特定の資格を有する工事監理者が求められるため、一部の住宅・不動産企業では、採用に時間を要し結果的に上手く行かないケースも見受けられます。
そこで本記事では人材紹介エージェントの視点から、混同しやすい施工管理との違いや工事監理の採用戦略について解説します。
工事監理(施工監理)と施工管理は、建築プロジェクトにおいて異なる役割と責任を持ちます。それぞれの違いについて把握しておきましょう。
工事監理者は、建築工事が「設計図書」に基づき正しく実施されているかを確認する専門家で、発注者側として重要な役割を担っています。
工事の進行状況、品質、安全性などを監視し、中間検査や完了検査申請の際は書面にて工事監理の状況報告を行い、問題があれば施工者に指摘し建築主へも報告します。
また、一定の建築物の工事を行う場合、工事監理者は一級建築士、二級建築士、木造建築士のいずれかの資格が必要で、これは建築基準法・建築士法に基づき定められています。
対して、施工管理はいわゆる現場監督として扱われることもあり、業務を遂行する上で原則として特定の資格を要しません。
ただし一定規模以上の工事現場では、施工管理(主任技術者や監理技術者の場合)でも施工管理技士資格を持っているケースがあります。
工事が計画通りに予算内で進行するよう、スケジュール調整や安全管理を行い、原価管理、職人やクライアントとの仲介等も幅広く対応します。
ハウスメーカー等が行う民間建築では、設計から施工まで一社一括で請け負い、施行管理と工事監理を一つの企業内で実施するケースがよく見られます。
同一企業がすべてを行うため、工期短縮やコスト削減等のメリットがありますが、第三者の監督が不在であるために、透明性や品質保証に課題が生じる可能性があります。
一方、大規模な公共建築等では、発注者側が設計と施行を切り分けて契約する形式も見られます。この場合、設計事務所が設計と工事監理を担うことが一般的です。
役割が分離するため高い透明性が保たれますが、プロセスが複雑化するためにスケジュールの長期化やコスト増等のリスクがあります。
参考:国土交通省「工事監理ガイドライン」 日本建築士会連合会 「工事監理と施工管理は異なります 」 国土技術政策総合研究所「設計・施工一括発注方式 における課題と対応」
特に住宅の新築工事等では、監理者を設けずに建築工事を実施する企業も一部で存在します。
このような場合、住宅の欠陥箇所が見つからないまま完工となり、数年後に「欠陥住宅」として露呈することも残念ながら見られます。
人手不足や工期のスケジュール等の様々な理由が、こうした状況を生み出しています。
では、住宅・不動産企業で工事監理をしっかり採用したくても、できないケースや適合する人材に辿り着けない理由は何なのでしょうか?具体的に見ていきます。
有効求人倍率が1を上回る場合、求職者1人に対して求人が1以上存在し、求職者に選択肢が多い状況ですが、令和5年10月分の有効求人倍率は1.30倍でした。
また、完全失業者数は175万人で、前年同月に比べ3万人減少していることが述べられています。
このことから、転職市場は求職者にとって比較的有利で、企業にとっては採用が難しい状況にあると言えます。
出典:総務省「一般職業紹介状況(令和5年10月分)について」 総務省統計局「働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)10月分結果」
多くの求職者はこれまでの設計や施工管理の経験、設計士資格等を活かしたいと考えており、工事監理として採用されれば格段にキャリアアップが可能となります。
しかし、職種のポジティブな側面のアピール不足により、適合する人材を引き付けられていない可能性が考えられます。
加えて、企業独自の魅力も伝えきれていないという側面もあるでしょう。
新築住宅等の民間建築以外の工事監理は、ホテル、大型店舗・施設、公共建築、リゾート施設、レジデンス、テーマパーク等大規模の現場が多いことから、以下のような経験が豊富な人材が求められます。
しかし、これらの要件を満たす経験豊かな人材は限られており、優秀な人材は企業間で獲得競争が起こっている状況です。
ここからは、施工監理を採用する際の効果的なアプローチや、求める人材を惹きつけるための施策を紹介します。
他社より早く求める人材に辿り着くには、まずは自社が求める人材を事前に明確にしておくことです。ここでは明確化するための手順例を紹介します。
STEP1:自社の事業戦略・課題を明確にする
自社の事業内容や戦略・課題によって、候補者に求められるスキルや経験が異なるため、洗い出しておきます。
STEP2:自社の採用基準を決める
次に自社の採用基準を決めます。
採用基準は、スキル・経験・資格・性格・価値観など、さまざまな項目で設定することができます。
STEP3 :欲しいターゲット層を定義する
ターゲット層とは、自社の採用基準を満たす人材のことです。
具体的には以下のような項目から選定します。
STEP4:目標とする応募数や有効応募数を設定する
市場調査や過去の採用データを分析して、求人に対する応募が期待できる数を予測します。
その上で、採用したい人材の質・必要なポジションの数に応じて、目標応募数や有効応募数(資格要件を満たしている応募者の数)を定めます。
求める人材・採用目標が決定したら、それに応じた求人媒体を選びます。
オンラインの採用媒体を利用するなら、経験や一定の資格が求められる工事監理は、求職者を多く抱える総合求人サイトか、業界特化型サイト両方を検討するのが望ましいでしょう。
自社の魅力をどう打ち出すかが応募数や質に大きく影響するため、掲載前には、求人サイト担当者と綿密にやりとりするに加えて、自社の特色と魅力が正確に反映されているか確認します。
求める人材のハードルが高く、他企業との人材獲得競争が高い場合は、求人媒体と人材紹介エージェントを併用することで効率的に採用活動を行えるでしょう。
人材紹介では、紹介者が入社に至った場合に料金が発生する「成功報酬型」が一般的で、採用人材の年収の35%前後が相場となることが多いです。
より広範な候補者へのアクセスと精密なスクリーニングにより、採用プロセスの効率化を実現できます。
ユナイテッドマインドジャパンは住宅・不動産業界に特化した人材紹介エージェントです。
監理業務豊富な人材の紹介実績もあり、気になる方は下のボタンからお気軽に問い合わせください。
一部の採用サイトは分析ツールを提供し、結果をサイト担当者が提供する場合もありますが、企業自身でデータ分析することは今後の戦略策定に役立ちます。
採用サイトの分析を行う際には、以下のポイントに注目します。
コストや手間をかけて採用したのに早期離職が発生すると、採用プロセスを最初からやり直すことになります。
こうしたトラブルを防ぐためには、入社後のサポート体制の強化(オンボーディング)が欠かせません。
オンボーディングは、施工監理として経験の浅い人材はもちろん、監理職のベテランが転職後に感じやすい「これまでのキャリアと比較してやりがいを感じられない」等のケースにも有効です。
オンボーディングの実施方法には、以下のような手法があります。
経験豊富なメンターを割り当て、業務の指導、企業文化の紹介、キャリアの相談等を行います。
入社後の初期段階で定期的なフィードバックを提供し、進捗、課題、成長の機会についてオープンなコミュニケーションを行います。
カジュアルなミーティングやランチ会等を通じて、既存社員との交流の場を設けます。
住宅・不動産業界における工事監理(施工監理)の採用は、資格と経験を持つ人材の確保が重要です。そのためには、求職者市場の競争と職種の魅力を考慮し、明確な採用戦略が求められます。
ユナイテッドマインドジャパンでは、住宅・不動産業界に特化し、様々な要件を満たす人材紹介サービスを提供しています。人材紹介のお問い合わせは以下のボタンよりお願いします。