民間有識者グループの「人口戦略会議」は、全国の約4割の自治体において、20歳から39歳の女性の人口が2050年までに半減すると予測し、これらの自治体が将来的に「消滅する可能性がある」との報告書を発表しました。
このような人口減少が進むと、社会や経済に与える影響は極めて深刻で、住宅・不動産企業でも、欲しい人材の獲得がさらに難しくなることが予想されます。
企業はどのような採用戦略を講じればこうした課題に対応できるのでしょうか?
同報告書では、首都圏1都6県で「消滅可能性自治体」とされたのが91あり、この中には栃木県日光市や神奈川県箱根町、群馬県草津町といった有数の観光地も含まれています。
東北地方と北海道は6割以上、青森と秋田では8割以上の自治体が「消滅可能性自治体」に該当したとのことです。
すでに人口過疎が進む地方では、公共サービスの低下が顕著であり、買い物や通院などの日常生活が難しくなっているほか、治安の悪化、自然災害への対応能力低下等、多くの問題が発生しています。
これらの問題は、住宅・不動産企業にも影響を与え、特に戸建て専門のハウスメーカーや工務店が経営難に直面しているケースが見られます。
新築着工数の減少に伴い、一部の企業ではすでに倒産や事業撤退しており、この傾向は今後さらに強まると予想されます。
出典: 人口戦略会議 「 令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート 」
※国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとに算出された20代から30代の女性の数、「若年女性人口」の減少率を市区町村ごとに分析
地方だけでなく、都心部や大都市圏でも人口構造の変化が顕在化しています。
関東では25自治体が「ブラックホール型自治体(出生率が低く、ほかの地域からの人口流入に依存している)」ことが報告書で述べられています。
一方で、帝国データバンクの「首都圏・本社移転動向調査(2023年)」調査によると、首都圏に企業が移転するケースが増えており、中でも不動産業と建設業はコロナ前平均の1.7倍と目立っています。
これは東京都心の再開発や、オフィスビル仲介の需要が増えていることが背景にあります。
このように、人口減少の中で企業数が増えると、限られた労働力を巡る競争はさらに激化します。
では、都市部で展開する住宅・不動産企業は、今後どのような採用活動を行うべきでしょうか。
出典:帝国データバンク「首都圏・本社移転動向調査(2023年)」
スキルの習得や資格取得支援は、社員の将来に対する不安解消やモチベーションアップにつながるだけでなく、企業に対する満足度を向上させます。その結果、他社への転職を考える必要が減り人材の定着につながるのです。
人材育成を支援する方法には、社内研修プログラムの提供や外部のセミナーへの参加支援等が挙げられます。
一方で資格取得を企業が義務付けている場合、その要件や業務への影響を採用前に明確に伝えることが重要です。
例えばある工務店では、1級建築施工管理技士試験を受ける社員がいる場合は、現場に伝えて残業させない等時間的配慮をしています。
こうした取り組みが社員のワークライフバランスを支え、組織全体の生産性向上にも寄与します。
大都市圏における採用競争は激しく、特に労働時間、休日等の労働条件を重視する20代〜30代前半の若手層を惹きつけるためには職場環境の改善は必須です。
上記のように働きやすい環境を提供することで、特に女性や若手の長期的なキャリア形成をサポートします。
また、退職した人材を再雇用するアルムナイ制度の導入は、30代から40代の中堅社員が不足している企業にも有効です。
日本で雇用の流動性が高まっていることを考慮すると、これらの措置は将来の人材確保にとって重要な戦略となり得るでしょう。
人口流出が問題となっている地方都市では、地元の特性を活かした中途採用戦略を展開することが重要です。
地方企業は地域密着型のビジネスモデルを採用することで、地元の人材を積極的に活用し、地域社会とのつながりを深めることができます。
例えば、大手のデベロッパーやハウスメーカーが実施している「スポーツスポンサーシップ」のように、地元のスポーツ団体を支援することは、ブランド認知を向上させると共に地域住民からの信頼と支持を得る効果的な手段です。
地元での知名度を効率的に高めることで、結果的に地元の優秀な人材を採用する機会も増加するでしょう。
また、地元イベントへの参加や地域振興プロジェクト等との協力を通じて、地域社会と密接に連携することで「関係人口(元々はその地域の住民ではないが、何らかの形で地域と繋がりを持つ人々)」を活用した採用戦略を強化できます。
これに加え、地方都市の企業はUターン(地元に戻ること)、Iターン(都市部から地方へ移ること)、Jターン(他の地方から移ること)といった形で地方回帰を促す採用を積極的に行うべきでしょう。
地元出身者のみならず、他地域からの優秀な人材も地方都市へと引き寄せ、地域の活性化を図ることが期待されます。
UJIターンについては以下の記事に詳しくまとめています。
人口動向を踏まえた中途採用戦略は、企業成長にとって不可欠です。
しかし、単に利益のために競合と人材を争うのではなく、各企業が住宅・不動産業界の将来を見据え、前向きな行動を取ることが業界全体の発展につながるのではないでしょうか。
ユナイテッドマインドジャパンは、住宅・不動産業界に特化した人材紹介サービスを提供しています。
当社は単に人材を紹介するのではなく、企業と候補者の双方が求める最良のマッチングを実現することに注力しています。
もし採用のご相談や具体的な人材ニーズについてお話しされたい場合は、以下のボタンからお気軽にご連絡ください。