住宅・不動産業界では、近年の少子高齢化や労働人口の減少によって、新規採用が一層厳しい状況となっています。そのため優秀な人材を採用し、長期間にわたり定着させる施策が急務となっています。
しかし「時間をかけて採用したのに、なぜうちの会社には人材が定着しないのか?」とお悩みの採用ご担当者様もいらっしゃるでしょう。
今回は人材の定着の背後にある課題や、優秀な人材の離職防止の取り組み(リテンションマネジメント)について詳しく解説します。
人材定着率の向上には、具体的な数値を基にした分析と計画が不可欠です。まず自社がどのような状況にあるかを把握することから始めましょう。
定着率は以下のように計算できます。
定着率(%) = (期間末の社員数 – 期間中の新規採用数) / 期間初の社員数 × 100
計算の期間は、企業のニーズに応じて「年次」「四半期」「月次」などでカスタマイズできます。
例として、ある企業における年間の人材定着率を計算してみます。
年間初めの社員数: 100人
年間末の社員数: 95人
年間中の新規採用数: 10人
定着率(%) = (年間末の社員数 95人 – 年間中の新規採用数 10人) / 年間初の社員数 100人 × 100
= 85 / 100 × 100
= 85%
厚生労働省の最新の調査によれば、令和4年の年初の「全労働者数離職率」は15.0%でした。言い換えると定着率は85%となります。もちろん企業や業種ごとに数値は変動するため、自社の状況をしっかりと分析し、独自の戦略を立てる際に参考にするといいでしょう。
出典:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」
人材が頻繁に入れ替わり、定着しないことで企業に生じる問題は深刻です。具体的には以下のような課題が挙げられます。
これらの問題を解決するためには、採用プロセスの質を向上させ、適切な人材のマッチングを図る必要があります。
ユナイテッドマインドジャパンの人材紹介サービスでは、専任担当者が貴社の採用プロセスと住宅・不動産業界の慣習、組織文化を深く理解し、マッチング度が高い人材を選定します。採用要件を満たす候補者のご紹介から定着にいたるまで、継続的にサポートいたします。
採用活動は、採用後にその人材が定着し活躍してはじめて成功という側面もあるため、新たな人材への継続的なフォローは不可欠です。
ここからは、人材定着率を向上させるための効果的なリテンションマネジメントをご紹介します。
人材定着率を向上させるためには、採用時のミスマッチを解消することが重要な要素となります。
特に、新卒採用よりも選考プロセスが早く進む中途採用においては、個人のキャリアや経験と企業の期待値との間に不一致が生じやすくなります。以下の点に注意し、適切な方法でミスマッチを最小化することも重要でしょう。
賃金の向上や福利厚生の拡充は、社員の満足度を向上させる要素です。給料や賞与は業務への意欲の源泉であるため、他社との給与水準の差や不明瞭な給与明細、残業代の欠如などがあれば、業務へのモチベーションを減少させる可能性があります。
具体例として、ある大手信託銀行では引越しを伴う転勤者に、一時金として50万円を支給する新制度を新たに導入しました。50万円という金額が高いか低いかは個人や状況により異なりますが、目的は人材の確保と定着であり、離職の防止を狙っています。
このような取り組みは、競争が激化する人材市場において、住宅・不動産業界においても重要であると言えるでしょう。
労働環境・社内環境の改善は、社員の満足度に関わるため、人材定着の重要な要素となります。例えば、業務の過密スケジュールや休日出勤の増加は、社員の満足度低下の原因となり、健康への悪影響も懸念されることから、適切な労働管理が求められます。
労働基準法の遵守はもちろん、年次有給休暇の取得も重要な課題です。付与された休暇は本来取得されるべきであるにも関わらず、取得できないことが常態化している場合は、企業はこの状況を認識し、改善に努める必要があるでしょう。
また、特定の社員への業務の偏りも働きやすさを損なう可能性があるため、バランスの取れた人員配置と制度の見直しも重要となります。
住宅・不動産業界においての働きやすい環境については、以下の記事を参考にしてください。
令和3年の厚生省の雇用動向調査によると、離職の理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」と回答した割合が8.1%と高く、無視できない数字になっています。
新しい環境に馴染むにはある程度の時間を要するので、人間関係の構築に苦労することがあります。また、先輩・上司が年下の場合、プレッシャーが増すということもあります。これらの解決策として、定期的なミーティングの実施、オープンスペースの設置、社内SNSの活用など、開かれたコミュニケーションを促進する方法を考えるべきです。
良好な社内コミュニケーションは社員の満足度を高め、企業全体の健全な発展に寄与する重要な要素となります。
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」
企業における人事評価制度は、等級制度、人事評価制度、賃金制度の3つの柱から成り立ちます。この制度は、社員に対して明確で公正な評価を提供し、職務に対するやりがい・達成感と認識を高める要素となります。
昇進や昇給の明確な基準があり、社員が自身の業績や貢献が適切に評価されていると感じると、職場への満足度が向上し、長期的な定着が期待できるようになります。逆に、不透明な評価制度は、モチベーション低下や早期離職の原因となることもあります。
即戦力として採用した中途採用者に、教育や研修が不要だと考える企業も一部で存在します。しかし、企業理念やルールの理解、配属部署での業務習得などの面から考慮すると、パフォーマンスの向上や離職を防ぐ目的として、重要な要素であると言えます。
さらに、1on1ミーティングなどの人事との個別対話、上司との定期的なコミュニケーション手法は、中途採用者が新しい企業文化に迅速に適応し、長期的なキャリアを築いていく助けとなります。
転職が一般化し、多岐にわたるキャリア選択が可能となった現代の労働市場を考慮に入れると、新卒採用者と同様に、中途採用者に対してもしっかりとした教育とサポート体制の構築が不可欠ではないでしょうか。
採用した人材がずっと働き続けたいと思える「選ばれる企業」になるためには、人材が定着しない原因をしっかり把握し、現状を振り返ることが第一歩です。その上で最適なリテンション施策を講じ、社員が長期にわたり活躍・定着できる環境を整備しましょう。
ユナイテッドマインドジャパンは住宅・不動産業界に特化した人材紹介サービスを提供しております。契約社数は100社を超え、大手ハウスメーカー、工務店、不動産会社などのクライアント企業と信頼関係を築いております。
人材の定着にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。