応募者が少ない、質の高い人材を探せない――これらは中小・ベンチャー企業が採用で直面する一般的な問題です。大手企業と競合するには限界がありますが、それでも成功するための方法はあります。
本記事では、中小・ベンチャー企業が採用で成功を収めるための効果的な施策について、人材紹介会社の視点から解説します。さらに、採用プロセスに役立つ助成金についても紹介します。
「応募が少ないのは当社の知名度が低いからだ」と悩む経営者も少なくありません。
しかし、国内に存在する約421万企業のうち、99.7%が中小企業であるというデータがあります。求人市場においても同様で、中小企業が多数を占めています。このような状況下で、企業知名度に過度に焦点を当てるのは有益ではありません。
求職者の志向は一様ではなく、必ずしも全員が全員、中堅大手で働きたいとは限りません。地元の地域密着企業で働きたい、少数精鋭の企業で働きたい、中小企業・ベンチャー企業で働きたいという求職者も存在します。このような求職者に上手く接触して、結果的に入社を促すことが求められます。
出典:中小企業庁資料
中小・ベンチャー企業は、規模による知名度の差だけではなく、さまざまな採用課題に直面しています。
中小企業はしばしば、給与や福利厚生といった条件面で大手企業に対抗するのが難しい場合があります。これは求職者にとっての魅力を損ない、最終的に採用に影響を与える可能性は否めません。
中小企業が限られた予算内で採用コストを投じた場合、大手企業ほどの求人情報の露出や可視性は期待できません。大手企業が多額の広告予算で求人情報の可視性と露出度を高める一方で、中小企業は同じような露出を得ることが難しいのです。
住宅・不動産業界でよく見られるのは、専門的な職種に特化した少数精鋭のチームが多いことです。そのため、人事専門の部門がなく、経営者や現場責任者が採用活動を兼任する場合が多いです。このような状況は、中小・ベンチャーではなおのこと、採用活動でのスピードや効率性に影響を与える可能性があります。
ここまで見てきたような採用課題は、多くの中小・ベンチャー企業に共通するものです。しかし、これらの課題を克服するための施策も存在します。次に具体的な施策を8つご紹介します。
賃金設定においては、周辺地域の同業他社との比較調査を行い、それを少しでも上回る賃金を提供することが望ましいです。求職者が企業を選定する際の基準となるため、最低ラインを下回ると選考から外れる可能性が高くなります。ただし、基準を変更する際は既存の社員との給与バランスも考慮に入れる必要があります。
賃金以外にも、福利厚生や職場環境など従業員満足度を高める要素があります。具体的には、健康保険の充実、柔軟な勤務形態、研修制度などを設けることで、年収だけでなくその他の要素でも求職者にアピールすることができます。
リソースが限られている場合、採用メディアの特徴や効果を知っておくことで、質の高い応募者を獲得しやすくなります。しかし全ての課題を解決するわけではないことも知っておきましょう。
Indeed、求人ボックスなどの求人検索エンジンは、企業にとって低コストで広告掲載が可能な選択肢です。無料で求人情報を掲載でき、それなりの露出度が期待できます。ただし競合する他の企業が有料掲載を利用している場合、その影響も考慮する必要があります。
engage、Airworkなどの採用支援ツールは、応募管理や求人検索エンジンへの掲載などをスムーズに行えます。これらのツールは多くの場合基本機能が無料で提供されていますが、高度な機能や長期的な利用には制限がある場合があります。
ジモティーのような地域情報に特化したサイトや、Facebook、InstagramなどのSNSも、採用に役立つ低コストの媒体です。これらのプラットフォームは口コミやシェアが容易で、求職者が自らのネットワークに求人情報を拡散する可能性もあります。これにより、採用広告の露出が自然と高まり、予算を抑えつつ効果的な採用が行える可能性が高まります。
ただし、求職者の質や量にばらつきが生じる可能性があり、レスポンスが遅い場合は採用プロセスに影響する場合があります。
求人広告を作成する際には、対象となる求職者の特性やニーズに焦点を当てる必要があります。例えば施工管理のような専門職を対象とする場合、必要な資格(例:建設業経理士、一級建築士など)を明確にすることで、適切な候補者が応募しやすくなります。
その際、広告内で求職者が検索する可能性の高いキーワードを用いることが重要です。具体的には、「未経験歓迎」「経験者優遇」「資格を活かせる」「資格取得支援あり」などのフレーズを盛り込むと、求職者が検索エンジンでそのようなキーワードを入力した際に、広告が上位に表示される可能性が高まります。
住宅・不動産業界において、特定の専門知識や高度な技術が必要な場合、または採用に関する経験が乏しい場合には、人材紹介サービスが有効な選択肢となります。
注意点として、人材紹介サービスは通常の採用手法よりも費用が高くなることがあります。一般的には、採用した人材の年収約30%〜35%として計算されます。例えば、年収500万円の人材を採用した場合、紹介料として150万円〜175万円が発生します。
費用がかかる理由は、人材紹介サービスが提供する付加価値にあります。
具体的には、求職者の動機づけ、適切なマッチング、そして最終的な内定までのプロセスを徹底的にサポートするためです。これらのサポートにより、採用プロセスがスムーズに進む可能性が高まります。
採用に課題があると感じた場合、専門の人材紹介サービスを活用することで、より適切な人材を確保するチャンスが広がります。ユナイテッドマインドジャパンまで気軽にお問い合わせください。
採用活動で専門的な業務、例えば採用広告の制作や初期書類選考は、外部の専門機関に委託することで効率アップが期待できます。
一方で、重要な面接対策や戦略的な業務(採用計画や目標設定など)は内製化することで、企業内の採用ノウハウが蓄積され、長期的にコスト削減にも寄与します。
採用活動をAIや自動化システムにより一元化することで、効率が大幅に向上できるため、働きやすい環境を整えることが可能となります。長期的に働く社員が増加し、採用コストも相対的に低減できます。その際、システム構築のためのコストや、トラブル時の対応などのデメリットもおさえておきましょう。
リファラル制度(紹介制度)とは、既存社員が知人や友人を会社に紹介する採用手法です。特に住宅・不動産業界においては、業界特有のスキルやノウハウが求められることが多いため、既存社員の紹介は価値があります。
しかし報酬に重きを置くと、紹介される人材の質が低下する可能性もあります。また、紹介による採用が増えると、社内の人脈や関係性に偏りが生じる可能性も考慮する必要があります。
オファー後やクロージングの段階で工夫を凝らすことで、内定者が他のオプションを選択することを防ぐことができます。ただしフォローが過度になると、逆に内定者に圧迫感を感じさせる可能性もあります。フォローにかかるコストやリソースも無視できません。
より詳しい解説と具体的な施策については、以下の記事を参考にしてください。
ここからは、採用課題を解決する上で役立つ助成金プログラムについて詳しく解説します。
雇用の安定、技術研修、働き方改革など、企業活動に直接関わる多くのテーマで、多数の助成金・補助金が提供されています。
助成される金額は、その目的や規模によって大きく異なります。詳細は、発行機関や対象地域、申請時期などによって異なるため、具体的な条件や適用範囲については、各助成金の公式ガイドラインや資料を参照してください。
厚生労働省が管理し、企業が特定の雇用課題に対処する際の財政的支援を提供する制度です。この助成金は、雇用の安定、スキルアップ、働きやすい環境の整備など多岐にわたる目的で使用できます。
参考:雇用関係助成金
業務改善助成金は、中小企業が生産性を高めるための設備投資や、最低賃金の引き上げなどに対して、費用の一部を補助する制度です。
参考:業務改善助成金
女性の新規採用や職務範囲の拡大を促進する目的で設立されています。特に、女性の参加が低い職種において、都内の中小企業が女性を採用や配置を行う際に、そのための職場環境整備に関わる費用の一部が補助されます。
参考:女性活躍推進助成金
事業主が採用した社員のスキル向上や職業訓練を行う際に、その費用の一部を国などが補助する制度です。訓練経費のみならず、訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
参考:人材開発支援助成金
長時間労働の削減、フレックスタイム制度の整備、育児・介護と仕事の両立支援など、働き方改革の各種施策に対して支援する人気の助成金です。中小企業には2020年4月1日から、時間外労働の上限規制が適用されているため申請を視野に入れると良いでしょう。
参考:働き方改革推進支援助成金
住宅・不動産業界で採用課題を抱える中小・ベンチャー企業にとって、多角的な戦略と複合的な施策が必要です。業界特有の課題と機会を踏まえて、本記事で紹介した各ポイントを参考に、貴社独自の採用戦略を考慮してみてはいかがでしょうか。
さらなる詳細や人材マッチングに関する支援が必要な場合、お気軽にユナイテッドマインドジャパンへお問い合わせください。