住宅着工7.3%減、分譲・貸家ともに低調――国交省9月建築着工統計

2025年秋の住宅市場は、金利上昇懸念や資材価格の高止まりを背景に、やや冷え込みが見られます。

国土交通省が発表した「建築着工統計調査報告(令和7年9月分)」によると、9月の新設住宅着工戸数は前年同月比7.3%減と2か月連続で減少しました。内訳では、持家・貸家・分譲住宅すべてが前年割れ。

一方、季節調整済み年率換算値では前月比2.4%増とやや持ち直しの動きも見られ、需要の底打ちが近づいている可能性もあります。

新たな動き

新設住宅の総数は依然として減少傾向ですが、構成別では動きに差が出ています。

持家は前年同月比2.2%減、貸家は2.6%減、分譲住宅は9.9%減と、いずれも前年を下回りました。

特に分譲マンションの落ち込みが顕著で、前年同月比19.9%減となっています。

国交省の分析では、建設コスト上昇や販売価格の高止まりが、供給側・需要側双方に影響しているとみられます。

課題

住宅市場の減速には、複数の要因が複雑に絡み合っている状況です。

住宅ローン金利の上昇に加え、建設資材の高騰や人手不足が続き、結果として建築コストの上昇を招いています。

また、賃貸住宅では人口減少や供給過多の影響が顕著で、特に地方圏では空室率の上昇が問題視されつつあります。

分譲マンションについても販売価格の高止まりが続く中、購買層の慎重な姿勢が強まり、首都圏・地方いずれの地域でも新規着工件数の減少が目立ちます。

さらに、建築需要の地域格差は広がりを見せており、都市集中型の構造的な課題が改めて浮かび上がりました。

取り組み

国交省はこうした状況を踏まえ、建築物の省エネ化や木造住宅の普及支援策を強化しています。

また、住宅投資を促すための税制優遇措置やリフォーム支援制度も継続中です。

「建築着工統計調査報告」では、住宅以外の建築物も分析されており、事務所・店舗が増加する一方で、工場・倉庫が減少するなど、非住宅分野でも明暗が分かれました。

国交省は、データをe-Stat上で公開し、地域別・構造別の詳細分析を進めています。

デジタル統計基盤を活用した政策立案も今後の焦点です。

展望

住宅着工は依然として減少傾向にありますが、長期的には住宅の省エネ化・リノベーション需要が市場を支えています。

特にZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や木造中層住宅など、環境性能を重視した開発案件が増加する見通しです。

一方で、少子化による住宅需要の縮小は避けられず、今後は新築から中古・再生市場へのシフトが進む可能性があります。

持続可能なまちづくりを見据えた、住宅政策の再構築が求められています。

住まキャリの見解

『住まキャリ』編集部では、今回の着工減少を住宅市場の転換期と捉えています。

新築着工の鈍化は一時的な調整局面であり、今後はリフォーム・リノベーション・省エネ住宅への需要転換が進むと見ています。

また、分譲マンションの減少は、購入層が「資産価値」や「長期居住性」を重視する方向へシフトしている証とも言えます。

『住まキャリ』としては、住宅供給の質を高め、地域ごとに異なるニーズを的確に反映する建築支援のあり方が重要になると考えています。

住宅市場の構造変化を見据えた柔軟な政策運用が求められているのです。


出典: 国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年9月分)」

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この記事を書いた人

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