不動産市場では、金利動向や企業の投資姿勢を背景に、法人による不動産取得の動きが注目されています。
とくに既存建物の取引は、事業再編や資産の組み替えを反映しやすい指標として位置付けられています。
国土交通省は、登記データを基に法人が取得した既存建物の取引量を指数化し、法人取引量指数として毎月公表しています。
同指数は、不動産市場の動向を把握するための参考指標として試験的に運用されています。
新たな動き

国土交通省が公表した令和7年9月分の法人取引量指数によると、全国の合計指数は季節調整値で277.2となり、前月比1.3%の増加となりました。
住宅分野の指数は308.3となり、前月から2.7%増加しています。
内訳を見ると、戸建住宅は355.7で前月比1.9%増となりました。
マンションは258.8となり、前月から1.0%の増加となっています。
非住宅についても227.3となり、前月比0.2%増と小幅ながらプラスを維持しました。
課題
法人取引量指数は試験運用中の指標であり、解釈には注意が必要です。
登記データを基にしているため、実際の取引時点と公表時点にタイムラグが生じる場合があります。
また、指数は量の変化を示すものであり、取引価格や収益性を直接反映するものではありません。
そのため、他の経済指標や不動産市場データと併せて読み取ることが重要になります。
取り組み

国土交通省は、既存住宅販売量指数との比較が可能となるよう、集計方法の統一を図っています。
マンションについては、床面積30㎡未満の取引を含む場合と除外した場合の双方を公表し、市場構造の変化を把握しやすくしています。
さらに、月ごとの季節性を排除するため、季節調整を行った指数を用いて公表しています。
こうした工夫により、法人による不動産取得動向をより正確に捉えることが可能になります。
展望
今回の指数からは、法人による既存建物の取得が引き続き底堅く推移している様子がうかがえます。
住宅分野では戸建・マンションともに増加しており、法人投資の対象が幅広いことが示されています。
非住宅分野も小幅ながら増加しており、オフィスや事業用不動産への需要が維持されていると考えられます。
今後も、指数の継続的な公表を通じて、不動産市場の変化を定点的に確認することが期待されます。
住まキャリの見解
住まキャリの見解では、法人取引量指数は、不動産市場における企業の投資姿勢を把握するうえで有効な補助指標と捉えています。
住宅・非住宅の双方で取引が増加している点は、法人が既存ストックを活用する動きが続いていることを示しています。
今後は、指数の推移とともに、取得後の活用方法や収益モデルにも注目が集まると考えられます。
不動産関連の実務やキャリアにおいても、こうした統計を読み解く力の重要性は高まっていくと言えます。
参照元:国土交通省 不動産・建設経済局 不動産市場整備課「法人取引量指数 令和7年9月分を公表(試験運用)」(令和7年12月26日公表)


