宅建士の年収は、働く環境で大きく変わります。
国の統計によると、不動産業界全体の平均給与は約470〜620万円ですが、成果報酬型の企業では年収1000万円を超える人もいます。
「資格を取ったのに年収が上がらない」
「同じ宅建士でも差がある」
と感じる背景には、評価制度や営業体制などの環境要因が大きく影響しているのです。
この記事では、公的データをもとに宅建士の平均年収を解説し、年収アップを実現するための具体策を紹介します。
宅建士の年収、2つのデータから見える「リアルな相場」とは?

宅地建物取引士(宅建士)に限定した公的な年収統計は存在しません。
しかし、多くの宅建士が活躍する「不動産業」に関する国のデータをもとにすれば、実態に近い年収相場を把握できます。
ここでは、厚生労働省や国税庁などの一次データをもとに、宅建士のリアルな年収を多角的に解説します。
成果が反映されやすい「営業職」の年収は約618万円
厚生労働省の「職業情報提供サイト(job tag)」によると、宅建士が多く従事する職種である「住宅・不動産営業」の平均年収は約618.3万円です。
不動産業界の営業職は、基本給に加えて個人の成果に応じた歩合給(インセンティブ)が加算される給与体系が一般的です。
そのため、個人の努力や成果が収入に直結しやすく、高い実績を上げることで年収1000万円を超えることも可能とされています。
約618.3万円という金額は、成果報酬の要素が反映された、いわば宅建士が営業職として平均的に活躍した場合の目安と捉えることができます。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)『住宅・不動産営業』」
業界全体の「平均」年収は約469万円
一方、国税庁が公表する「民間給与実態統計調査(令和5年分)」によると、宅建士が多く働く「不動産業、物品賃貸業」の平均給与は468.6万円でした。
この調査は、営業職だけでなく、事務職、管理職、企画職など、不動産業界で働くあらゆる職種の人々を対象としています。
固定給が中心の企業も多く含まれるため、業界全体で平均すると、営業職に特化したデータよりも低い金額になる傾向があります。
この年収は、業界全体の平均的な水準、または下限寄りの目安として参考になります。
他の国家資格と比べたときの宅建士の位置づけ
宅建士の平均年収と他の主要な国家資格と比べてみましょう。
厚生労働省や各資格団体の公表データをもとにした比較は次のとおりです。
| 資格名 | 主な就業分野 | 平均年収(目安) |
|---|---|---|
| 宅地建物取引士 | 不動産・住宅・建設 | 約469〜618万円 |
| ファイナンシャルプランナー(FP) | 金融・保険・不動産 | 約400〜550万円 |
| 行政書士 | 士業(独立・開業系) | 約400〜500万円 |
| 社会保険労務士 | 人事・労務コンサル | 約500〜650万円 |
| 税理士 | 会計・監査・コンサル | 約650〜800万円 |
| 一級建築士 | 建築・設計・監理 | 約650〜900万円 |
| 建築施工管理技士(1級) | 建築・土木現場管理 | 約630〜900万円 |
| 不動産鑑定士 | 不動産評価・コンサル | 約740〜760万円 |
上記の比較からも、宅建士は国家資格の中でも中間的な位置づけにあることがわかります。
しかし、売買仲介や土地活用など高単価な商材を扱う宅建士は、インセンティブ(歩合給)を含めることで、年収700万円〜1000万円に達するケースもあります。
一方で、固定給中心の事務職や賃貸仲介職では、平均水準である400〜500万円台にとどまる傾向が見られます。
宅建士の年収が上がりにくい理由4選

一方で、宅建士でありながら、「自分の年収はもっと低い」と感じている方も存在するのではないでしょうか。
その背景には、不動産業界ならではの給与体系があります。
ここでは、宅建士が思うように年収を上げられない3つの理由を解説します。
資格手当だけでは限界がある
多くの不動産会社では、宅建士資格に対して月1〜3万円程度の資格手当を支給しています。
これは年間で12〜36万円の収入増になりますが、年収を大きく押し上げるほどの金額ではありません。
CA小竹資格はあくまで「知識と責任の証明」であり、それだけで高収入が保証されるわけではないのが現実です。
「資格」よりも「実績・成果」が評価される
宅建士の年収を左右する最大の要素は、資格の有無よりも「成果」です。
特に営業職の場合、契約件数や売上高に応じて支払われる歩合給(インセンティブ)が、収入に大きく影響します。
宅地建物取引業法では、宅建士にしか行えない独占業務として次の2つが定められています。
- 契約前の「重要事項の説明」(第35条)
- 契約書(37条書面)への記名押印(第37条)
これらは不動産契約に欠かせない最終プロセスであり、営業活動と密接に関わります。
そのため、宅建士資格を持つ営業担当者は契約の成立に直接関われるため、成果=報酬につながりやすい立場です。
一方で、事務職や管理職など営業成績と連動しない職種では、資格を持っていても年収が上がりにくい傾向があります。
扱う商材単価によって年収の上限が変わる
上がりにくい宅建士の特徴の一つに、低単価の商材を扱っていることが挙げられます。
賃貸仲介や管理業務のように、一件あたりの報酬が小さい業務では、契約件数を積み上げても年収の大幅な上昇は期待しにくい傾向があります。
一方で、売買仲介や土地活用、投資用不動産など高単価な商材を扱う職種では、1件の契約ごとの歩合が大きく、成果に応じて収入が伸びやすくなります。



扱う商材の単価が、宅建士の年収レンジを決定づける要因の一つと言えるでしょう。


会社の給与制度や営業体制によって差がつく
同じ成果を上げても、会社によって年収が大きく変わるのが不動産業界の特徴です。
給与制度の違いでは、基本給が高く歩合給が少ない「安定志向型」と、成果次第で大幅な収入を狙える「成果主義型」があります。
また、営業スタイルによっても結果は変わります。
チラシやWebからの問い合わせに対応する「反響営業」は安定しやすい一方、電話や訪問で開拓する「新規営業」は成約率次第で高収入を得やすい傾向があります。
もしあなたが十分な実績を上げているのに年収が伸び悩んでいるなら、原因は個人の努力ではなく、年収が上がりにくい給与制度や営業環境にある可能性があります。
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年収アップを実現している宅建士の共通点


では、実際に高い年収を得ている宅建士は、どのような働き方をしているのでしょうか。
彼らには大きく分けて4つの共通点があります。ご自身のキャリアを考えるうえで、ぜひ参考にしてください。
- 売買仲介や土地活用など「高単価な分野」で活躍している
- 成果が正当に評価される「成果主義の環境」を選んでいる
- 宅建+αの専門性で「選ばれる存在」になっている
- 独立・開業して実力をそのまま収入に変えている
売買仲介や土地活用など「高単価な分野」で活躍している
まず最も分かりやすいのが、扱う商材の単価が高いことです。
例えば、賃貸仲介と売買仲介では、会社に入る利益が数十倍異なります。利益が大きい分、社員に支払われる歩合も高くなります。
年収1000万円以上を目指す宅建士の多くは、住宅・不動産売買仲介に加えて、投資用不動産や土地活用など、一件あたりの取引額が大きい分野で活躍しています。
成果が正当に評価される「成果主義の環境」を選んでいる
どれだけ高単価な商材を扱っていても、給与制度が年功序列では年収は頭打ちになります。
高収入を得ている宅建士は、成果が明確に給与へ反映されるインセンティブ制度が整った企業を選んでいます。



「自分の努力が報酬につながる」環境に身を置くことが、年収アップの第一歩です。
宅建+αの専門性で「選ばれる存在」になっている
高収入の宅建士は、資格に加えて「自分だけの強み」を磨いています。
たとえばファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得し、住宅ローンや税金など資金計画まで含めた提案を行うなど、顧客満足度を高めるスキルを持っています。
「宅建+FP」「宅建+施工管理」「宅建+営業マネジメント」など、複合的なスキルを持つ人ほど年収の伸び幅が大きい傾向にあります。


独立・開業して実力をそのまま収入に変えている
さらに一部の宅建士は、独立開業やフリーランス不動産エージェントとして活動しています。
完全歩合制(フルコミッション)の場合、契約1件ごとの報酬が直接自分の収入になるため、努力次第で上限のない高年収を狙うことが可能です。



収入の安定性や営業力が求められるため、リスクとリターンのバランスを見極める必要があります。
宅建士の転職で年収アップを狙える職種・企業の特徴
年収アップを実現している人の共通点がわかったところで、次は「どうすればそのような環境に転職できるのか」を考えましょう。
求人を探す際に、年収アップにつながる企業を見極めるための具体的な3つのチェックポイントを解説します。
- 「給与モデル」で歩合給の割合をチェックする
- 「事業内容」で扱う商材の単価をチェックする
- 自分に合った「安定と成果報酬のバランス」を見極める
「給与モデル」で歩合給の割合をチェックする
まず確認すべきは給与体系です。
求人票の「給与」欄に記載されている「年収例」や「給与モデル」に注目しましょう。
具体的な年収例がインセンティブ込みで記載されている企業は、成果を給与に反映させる文化がある可能性が高いです。
「安定した固定給」と「成果に応じた高い歩合給」のバランスが取れているか、給与モデルから読み解くことが最初のステップです。
「事業内容」で扱う商材の単価をチェックする
次に、その企業が何を扱っているか、つまり事業内容を確認します。
高収入を狙うなら、前のセクションで見たような高単価な商材を扱っている企業を選びましょう。
- 不動産売買仲介
- 投資用・事業用不動産
- 注文住宅販売
- 土地活用のコンサルティング
- 不動産開発(デベロッパー)
- 不動産ファンド・アセットマネジメント
- プロパティマネジメント(大規模物件)
- 富裕層向け不動産コンサルティング
求人票の「事業内容」や「仕事内容」の欄を見て、これらのキーワードが含まれている企業は、高い歩合給を得られるチャンスが大きいと言えます。
自分に合った「安定と成果報酬のバランス」を見極める
結論として、宅建士が転職で年収アップを成功させるには、安定した経営基盤と成果を正当に評価する給与制度の両方を満たす企業を選ぶことが重要です。
しかし、最適なバランスは人それぞれ。
「安定収入」と「高収入」、あなたがどちらを重視するかで、選ぶべき企業は変わります。
転職活動で、こんな壁にぶつかっていませんか?
- 求人票だけでは、実際の給与体系や歩合率が分からない
- 職場の雰囲気や営業のしやすさといった情報がない
- 自分の市場価値が分からず、どの企業が合っているか判断できない
これらの悩みを解決し、効率的に年収アップを目指すなら、業界特化のサポートを受けるのが一番の近道です。
不動産業界に特化した転職エージェント「住まキャリ」では、求人提案から面接対策まで一貫してサポートしています。







「住まキャリ」キャリアアドバイザーの小竹です。
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宅建士資格を活かした転職で失敗しない4つのポイント


有望な企業を見つけた後、転職活動で失敗しないためには、選考過程での「見極め」と「アピール」が重要になります。
入社後のミスマッチを防ぎ、内定を勝ち取るための4つのポイントを解説します。
- 求人票の「給与欄」の数字に惑わされない
- 資格手当の金額だけでなく「評価制度」を確認する
- 面接で「資格をどう活かして貢献できるか」を伝える
- 専門エージェントを使って効率よく年収アップを目指す
求人票の「給与欄」の数字に惑わされない
求人票に書かれた「月給50万円以上も可!」といった魅力的な数字だけを見て応募するのは危険です。
給与欄を見る際は、以下のポイントを冷静にチェックしましょう。
生活の基盤となる固定給が、自分の最低限必要な生活費を上回っているかを確認します。「みなし残業代(固定残業代)」が含まれている場合は、その時間数も必ずチェックしましょう。
「月給25万円~80万円」のように給与の幅が広すぎる場合、ほとんどの人が最低額に近い給与からのスタートになる可能性があります。最高額ではなく、最低額が現実的な数字かを見極めることが重要です。



高い歩合給だけでなく、安定して働けるだけの固定給が保証されているかを見極めることが、失敗しないための第一歩です。
資格手当の金額だけでなく「評価制度」を確認する
月数万円の資格手当も大切ですが、それ以上に重要なのが、入社後にどのような基準で評価され、昇給・昇格していくのかという「評価制度」です。
目先の資格手当の金額に惹かれて入社したものの、
- 評価基準が曖昧で、成果を上げても昇給しない
- 上司の好みで評価が決まる
といった環境では、長期的な年収アップは望めません。
面接の場では、「どのような評価制度になっていますか?」「昇給・昇格の具体的な基準について教えていただけますか?」といった質問をすることで、その企業の透明性や公平性を確認することができます。
面接で「資格をどう活かして貢献できるか」を伝える
面接官は、あなたが「宅建士の資格を持っていること」を知りたいのではありません。
その資格や知識を活かして、自社にどう貢献してくれるのかを知りたいのです。
「宅建士の資格を持っています」とだけ伝えるのではなく、
「前職では、宅建士として重要事項説明の正確性と丁寧さを心掛けた結果、お客様からの信頼を得て紹介契約が前年比で10%増加しました。
この経験を活かし、貴社の〇〇事業においても、顧客満足度の向上と売上拡大に貢献できると考えております。」
このように、過去の実績と入社後の貢献をセットで具体的に伝えることで、単なる資格保有者ではなく、「採用する価値のある人材」として高く評価されます。


専門エージェントを使って効率よく年収アップを目指す
転職エージェントは、一般には公開されていない「非公開求人」を多数保有しています。
その中には、重要なポジションや好待遇の求人が含まれていることも少なくありません。
また、個人では言い出しにくい年収や労働条件の交渉も、エージェントがあなたに代わって企業と行うため、より有利な条件で入社できる可能性が高まります。
求人票だけでは読み取れない「実際の社風」や「評価制度の運用実態」「部署ごとの働き方の違い」といったリアルな内部情報を提供できるため、入社後のミスマッチを限りなく減らすことができるでしょう。


【まとめ】宅建士の年収は転職で変わる!高収入を目指すためのポイント


宅建士の平均年収は約470〜620万円が目安ですが、資格だけで大きく稼ぐのは難しいのが現実です。
今の年収に満足していないなら、原因はあなた自身ではなく、成果が正当に評価されない環境にあるのかもしれません。
大切なのは、あなたの実績や強みを最大限に活かせる会社を選ぶことです。
あなたの宅建士という資格と経験は、正しい場所でこそ輝きます。まずは一歩踏み出してみませんか?











