ハウスメーカーに将来性はある？業界の現状と課題を越えた未来

ハウスメーカーへ転職しようと考えている方の中には、市場規模の減少や人材不足などの背景から、将来性があるのか気になっているかもしれません。

住宅はニーズが常にある市場のため、将来性は比較的安定している一方、人々の生活スタイルや考え方が日々変化しているため、企業は多くの課題をクリアしなければなりません。

そこでこの記事では、ハウスメーカーの将来性や課題について解説します。あなたがハウスメーカーへ転職するかどうか判断できるため、ぜひこの記事を最後まで読み進めてください。

ハウスメーカーの将来性は比較的安定

ハウスメーカーの将来性は以下の2つの理由によって、比較的安定しているといえます。

それぞれ解説するため、ハウスメーカーへ転職した後も、安定して働き続けられるかチェックしてください。

住宅は今後も高いニーズがある

住宅は衣食住のひとつである「住」にかかわる、生活していく中で欠かせないもののひとつです。今後も高いニーズがあることから、住宅を扱うハウスメーカーの将来性も安定しているといえます。

さらに、海外と比べて日本では新築を好む傾向があり、新築住宅のニーズは大幅には変わらないと考えられるでしょう。

また、近年では、在宅勤務が定番化し、書斎やワークスペースなどを確保するために、戸建てに住みたいと考える人も増えています。

経営基盤が整っている

一般的に全国規模で展開しているハウスメーカーは、経営基盤が比較的整っているといえます。

自己資本比率は、会社の安定性を分析するための指標のひとつです。総資産のうち、自己資本比率が高いほど負債が少なく、自己資本比率が高い会社は、負債が少なく安定していると考えられます。

一部のハウスメーカーでは、高い自己資本比率により財務の安定性が保たれ、これが新規事業への投資や市場の変動への対応に役立っています。ただし、自己資本比率のみで企業の安定性や倒産リスクを判断することは難しいため注意が必要です。

また、長年安定経営を行っている、中小のハウスメーカーや地元密着の工務店などもあります。

ハウスメーカー業界とは？

そもそもハウスメーカー業界とは、住宅の設計・建築・販売など、住宅に関する事業を展開している業界を指します。一部のハウスメーカーは自社で生産ラインを保有しているため、建築資材の大量生産が可能です。

ハウスメーカー業界を含む住宅業界では、ビルダーや工務店・設計事務所・住宅FCなどが挙げられます。

ハウスメーカーの中には、国内のみならず海外にも事業を展開しているところもあり、規模や商品の特徴などは会社によってそれぞれです。

ハウスメーカーが将来性を維持するための課題

先ほど述べたとおり、ハウスメーカーは比較的安定している業界ではありますが、時代とともに顧客のニーズや世間の情勢の変化によって生まれる課題が存在します。

ここでは、上記で挙げたハウスメーカー業界と課題について解説します。

課題①市場規模の減少

ハウスメーカーの課題のひとつに、市場規模の減少が挙げられます。
主に以下が市場規模に関わる一因です。

• 少子高齢化
• 資材の高騰

少子高齢化

現在、日本は少子高齢化が問題となっています。日本の人口や総世帯数は、今後も減少していく見込みです。人口・総世帯数の減少にともなって、ハウスメーカーの市場規模も減少傾向となっています。

少子高齢化による新築住宅需要の縮小に対し、ハウスメーカーは高齢者をターゲットとした医療・介護分野への提案や、リフォーム・リノベーションなど、新規事業への進出が必要となるでしょう。

参考：国土交通省 令和5年度住宅経済関連データ

資材の高騰

アメリカや中国での木材の需要増加や、新型コロナウイルスの蔓延などを背景に、ウッドショックが起き、資材が高騰・不足しています。日本の建築資材のほとんどは輸入に頼っており、木材を運ぶコンテナ不足も、資材が高騰する原因のひとつです。

木材の高騰によって、1棟あたりの住宅の価格が上がるため、ハウスメーカーにも大きな影響を及ぼしています。
ハウスメーカーは効率的に資材を活用するほか、代替資材の検討・在庫管理や調達戦略など、資材高騰への対策が必要となるでしょう。

課題②人手不足

ふたつ目のハウスメーカーの課題は、人手不足です。

売り手市場の中、ハウスメーカーでも人手不足が慢性化しているため、以下の対策を行う必要があります。

• 若手社員の定着
• インボイス制度対策

人材不足の課題をクリアするには、上記に対してどのような施策を行うべきか見ていきましょう。

若手社員の定着

中堅社員が抜け、若手社員もなかなか採用できないというハウスメーカーもあり、今後を担う若手社員の定着が求められています。

若手社員の定着を図るため、以下のような対策に励んでいるハウスメーカーが多くあります。

上記のように、継続的な改善と柔軟な対応をしているハウスメーカーであれば、今後さらに働きやすい環境になるでしょう。

インボイス制度への対策

ハウスメーカーは、インボイス制度への対策も必要です。

ハウスメーカーの場合、下請けの一人親方などの個人事業主が、免税事業者のまま課税事業者にならない場合には、継続依頼が困難になる可能性がでてきます。

このようなケースでは、ハウスメーカーが相手先の消費税も負担する必要があり、結果的に利益を圧迫します。

一方で仕事の依頼を継続しない場合には、住宅建築に欠かせない職人が不足し、建築計画に影響が出る可能性もあるでしょう。
ハウスメーカーは、下請けや委託先にインボイス登録してもらうか、直接雇用するなどの対策が必要です。

課題③顧客ニーズに合わせた商品開発

顧客のニーズは、情勢によって刻々と変化しており、以下のようなニーズに合わせた商品開発が必要です。

ハウスメーカーは、単身者やファミリー・同居世帯など、さまざまなライフスタイルに合わせて提案できる、付加価値の高い商品開発によって、競争が激化する住宅業界に対応できるでしょう。

ZEH住宅の提供

2030年には「ZEH水準の省エネルギー新築住宅の標準化」が政府目標として示されているため、迅速な対応が必要です。

ZEH（ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス）住宅とは、住宅で使うエネルギーの年間の消費量が、おおむねゼロ以下の住宅を指しています。断熱性能と省エネルギー性能を高め、消費する量を減らしつつ、太陽光発電などで再生可能エネルギーをつくり出す仕組みです。

災害の多い日本では、エネルギー自給率が低いことが問題視されていることを背景に、政府はZEHの普及を目標としています。ZEH住宅は、省エネルギー住宅の最上位モデルに位置づけられており、光熱費の削減や快適な住環境などが顧客のメリットです。

参考：国土交通省　家選びの基準変わります

自社中古住宅の改修・再販

自社の中古住宅の改修・再販事業など、自社の中古住宅の活用も重要です。新築住宅の高騰や収入の不安定さ、高齢者の老後の住まいなどの需要から、中古住宅の活用が注目されています。

ハウスメーカーが建築した住宅のブランド力や、信頼性を活かせるのが、中古住宅をリフォーム・リノベーションするメリットです。

高齢者をターゲットとする場合には、バリアフリー設計を施した中古住宅が良いでしょう。高齢者以外にも、ファミリーや単身者など、地域やターゲットに合わせた設計が重要となります。

中古住宅の改修・再販は拡大傾向にあり、ハウスメーカーにとって新たなビジネスチャンスです。

IT技術の導入

近年では、IT技術を取り入れたスマートハウスやスマートホームの需要が高まっています。さらに住みやすい住宅を提供することが、今後のハウスメーカーの課題のひとつです。

課題④リフォーム市場の拡大

ハウスメーカーは、今後拡大が見込まれているリフォーム市場へのアプローチも必要です。

なかでも、高齢者住宅のバリアフリーへのリフォームや、キッチンやお風呂などの水回りの改修が多いでしょう。また、高齢家族との同居など、ライフスタイルの変化に合わせられる提案も重要です。

加えて、空き家をリフォームし、若年層や単身者もターゲットとすることで、さらなる市場拡大へつながります。

ハウスメーカーの未来と展望

ハウスメーカー業界は今後以下のような未来が見込まれています。

それぞれの未来について解説するため、参考にしてください。

海外への事業展開

海外は人口が増加傾向で、住宅の需要が高まることが予想されるため、すでに海外進出しているハウスメーカーも存在します。日本の建築技術を輸出することで、さらなる市場拡大が期待できるでしょう。

新規事業の開拓

ハウスメーカーは新築一戸建て住宅の建築が主ですが、集合住宅や商業施設の開発・建設など、新規事業への開拓が見込まれます。事業規模の拡大だけでなく、社会貢献につながるのがハウスメーカーにとってのメリットです。

リフォーム・リノベーション事業への参入

少子高齢化の影響によって、新築住宅の建築数が減少傾向の中、需要拡大が予想されるのはリフォーム・リノベーション事業です。高齢者向けのリフォームや空き家リノベーションにより、今ある住宅を活用した事業への参入が考えられるでしょう。

デジタルトランスフォーメーションの導入

今後、デジタルトランスフォーメーション（DX）の導入が考えられます。デジタルトランスフォーメーションとは、AIやIT技術を活用して、新しい製品やサービス・ビジネスを作ることを指します。

ハウスメーカーでは、インターネットやSNSを活用し、顧客ニーズの把握と効果的な情報発信を行う、Webマーケティングに利用できるでしょう。また、業務を効率化し、コスト削減や人材不足解消のために活用可能です。

ハウスメーカーの将来性を踏まえて働く魅力

ハウスメーカーの将来性を踏まえて働く魅力は以下のとおりです。

それぞれ解説します。

高収入が期待できる

ハウスメーカーの営業職は、一般的に「基本給+インセンティブ」という給与形態となり、営業成績によっては高収入が期待できます。中には1000万円を超える収入の営業もおり、年齢や学歴・社歴・性別などは関係ありません。

インセンティブを設定している会社であれば、住宅に関する知識や営業スキルを磨くことで、高収入が期待できます。

ハウスメーカーの年収については、以下の記事も参考にしてください。

あわせて読みたい

ハウスメーカーの年収事情！不動産業界経験者が知っておくべき真実とは 本記事でわかること ハウスメーカーの平均年収 ハウスメーカーの年収が高い理由 ハウスメーカー勤務で年収1000万円超えは可能か？ 「ハウスメーカーの年収ってどれくら...

お客様の理想を実現できる

どの職種であっても、お客様の家づくりに1から関わり、理想を実現できるのがハウスメーカーで働く魅力です。

ほとんどの方が一生に一度の住宅購入のため、お客様の人生に大きく関われる、責任ややりがいのある仕事といえるでしょう。

新規事業の立ち上げに携われる可能性がある

リフォーム・リノベーション事業や海外進出など、新規事業の立ち上げに携われる可能性があります。ハウスメーカー業界は、顧客ニーズの変化にともなって、今後大きく変化するかもしれません。

新しいスキルや知識・経験を得られるチャンスがあり、今後のキャリアの幅を広げられるでしょう。

ハウスメーカーの将来性は各企業の戦略次第

この記事では、ハウスメーカーの将来性について解説しました。住宅は人が生活するために欠かせないため、ハウスメーカーの将来性は安定しているといえるでしょう。

しかし近年、市場規模の減少や顧客ニーズの変化によって、ハウスメーカーには多くの課題が存在します。課題に対して、どのような戦略を練るのかによって、会社の将来性は大きく変わるでしょう。

どのハウスメーカーへ転職すれば良いのか悩んでいる方は、専門家に相談するのもおすすめです。ハウスメーカーの将来性や課題をチェックして、転職活動を行いましょう。